2016年6月20日月曜日

クリプトコリネ ~この美しい水草~ Part4-2 最終回

さて、引き続きクリプトコリネの魔力である
「溶け」についてです。


前回のPart4-1の最後でやや脱線しましたが、
本線に戻って。。。

溶けた際にしなければならないことは
「ひたすら換水」と「溶けた葉の除去」です。
もちろん、設備上の不具合等も解消しなければ
なりません。
私は葉を出来るだけ多く残したいので、部分的に
溶けている場合は、その溶けた箇所だけ手で
擦り落として吸い出します。
翌日、同じ部位の溶けが進行していれば更に
擦り落として吸い出します。
これはかなり少数派、と言いますか、恐らく日本で
私だけじゃないでしょうか(笑)
人によっては少しでも溶けていたら付け根から
カットすると思いますが、私は生きている箇所は
全部残します。
なぜかと言うと、その部分は溶けが収束したら
そのまま残るからです。

先端や縁が溶けてしまった葉。
溶けが進行中に溶けた部分を吸出し、
溶けたら吸い出しを繰り返し、溶けが収束
したので、葉の60%程度が残りました。

こちらは葉の大部分を失ってしまいました。
しかしながら、ここで溶けは止まり、なんとか
生き残りました。なんともいじらしいですね。。。



個人的にはこの溶け残った葉にも役割があると考えています。
また、前述の斑点だらけになってしまった葉も、換水を続けて
対処していると、そのまま溶けないこともよくあります。
溶けの嵐の中を耐え抜いたこれらの葉は、見た目も良くなく、
今にもまた溶けそうな印象があるのですが、全体の溶けが
完全に止まれば、これらの葉の溶けの進行も止まります。
そして役割を果したら、すっ。。。と枯れていきます。
この「枯れ」も見た目は溶けているように見えますが、
悪い「溶け」ではありません。私はこれを「枯れ溶け」と
勝手に呼んでいます。

枯れ溶けが始まったところです。大溶け時に
葉先をいくらか失っていたのですが、耐え抜き、
状況が安定→好転したところで、役目を終えました。

こちらは更に枯れ溶けが進んでいます。
大溶け時の葉が崩壊していく感じと異なり、
葉の形を残して中身だけ抜けていくような
印象です。この場合、基本的に溶けは
他の葉に広がるようなことはありません。


大規模な溶けは油断した時に必ずやってくるので、
クリプトコリネからの警告なんだと思ってます。
「お前がさぼってるから、手抜きしてるからこうなるんだぞ。」
「さぁ、なんとかしてみろ。」
あたふたと必死で毎日換水して、なんとか溶けが収まり、
換水ペースを徐々に落として、通常通りに戻った後に
待っているのは。。。


破壊後の大復活です。


以下の仮説等は個人的な想像で、主にヒュードロイ水槽での
出来事なので科学的根拠は全くありませんが、私は、
溶け=細胞の崩壊、と認識していて、細胞が崩れることに
よって中身が流出するために水槽と言う閉鎖環境では
短時間で水が一気に濃くなり(クリプトの溶けるスピードは速い)、
更なる溶けを誘発する、と考えて対処行動を組み立てています。

※現地での溶けは見たことありますが、水槽の
それとはちょっと違うと思います。

溶けが収束して、再生が果たされる時には、植物体の量が
大幅に減っている上に、流出した成分が栄養素となり、
また、繁茂していた葉に覆われていた各株の生長点にも
光が当たる様になるので、必ず以前よりもしっかりとした、
色の濃い葉が展開します。
頻繁な換水をしているため、殆どは水槽の外に取り出されて
いるようにも思いますが、それまでの貧栄養の安定環境とは
異なる養分の組成になっている印象です。

単に光が当たる様になったから茶色が出ると言うことであれば、
絶好調時において有茎草のように水面に棚引いている葉が
茶色にならないとおかしいのですが、そうはなりません。
また、大溶けの後半から復活の過程で必ず同じことが起こります。
「珪藻の発生」と「ミジンコ類の発生」です。
珪藻やミジンコ類は常にどこかには存在しているのですが、
この時は普段より多めに見られるようになります。
珪藻は安定してくると普段通りの量に戻ります。ミジンコはその後
しばらくは多め見られます。イメージとして水槽の立ち上げが
上手くいった感覚に近いです。

完全に環境が落ち着いたようで、減少したもの
まだ見られる珪藻とミジンコの類。


黄色っぽい葉が大溶けを耐え残った葉です。
復活して隙間なく新しい葉が茂りつつあります。
大溶けの後は底床が丸見えになるくらい
スカスカになるので、かなりテンションが下がります(笑)


今回は復活の最中に蛍光灯からLEDに
照明を変更しました。すると今までとは明らかに
異なる葉の展開が見られました。葉幅が広いです。
約20年の中で初めて見る葉の形状です。

この大復活こそが、私がクリプトコリネの水中育成がやめられない
大きな理由の1つです。この一瞬の達成感を味わうために
すべての苦労があるのです。それまでは苦行ですよ(笑)
溶け=クリプトからの課題だったりするわけですが、その課題を
見事クリアすると与えられるご褒美として、更に美しい群生を
見せてくれる。そしてまだアクアリウムの世界では説明されていない
この溶けと復活の不思議なプロセス。こんなところにクリプトの
魅力はあるのだろうと思います。

つまり、環境が変わるたびに溶けたり葉色や形状を変化させたりと
こちらの行動がはっきりと反映されるところが魅力と言うわけです。
そして、上の画像のような群生を維持するのに行うことは、
リシアのような煩雑な巻き直しやこまめな栄養素の添加、
有茎草における頻繁なトリミングなどではなく、たった1つだけ。
定期的な換水のみ。渓流系の場合はこれに尽きます。
(ピートスワンプ系は少々異なりますが)
ひたすら無駄な行為はそぎ落としていき、ひたすら当該種の好む
環境へと時間をかけて水槽を作り上げていく。凄いことの
ようですが、やってることは観察と換水だけ。そう、基本的には
楽なんですね。
こんなことだけで、たった1種が20年も飽きることのない姿を
見せ続けてくれる水草、クリプトコリネ。


販売されているクリプトコリネを前に悩んでいるみなさん、まず
ダメ元でも良いのでご自宅の水槽に植えてみると良いと思います。
きっと他の水草では体験できないことがあるはずですよ。

今はもう無い、HBD「Hans Barth Dessau」の札。



クリプトコリネ ~この美しい水草~
ひとまず終わり。