2016年8月28日日曜日

水草業界の分水嶺 (2)

前回は水草が供給される流れの変化を
見てみました。
今回は流通も含めた販売方法が迎えた
大転換点を考えてみたいと思います。


さて、その転換点とは。。。


「組織培養カップ」


の登場です。

もちろん昨日今日出てきたわけではありませんが、
これが主流になろうかと言う雰囲気が出てきています。
組織培養カップのメリットは、輸送や陳列、梱包が
容易になり簡略化できる点です。
他にはよく言われるコケやスネール等の混入を
防止できるということもあります。

更にファームから問屋では植物検疫でのリスクが
大幅に下がり、空港で処分されることはまず無いと
思います。
そして問屋~ショップにおけるメリットとして挙げた
前述の内容をより具体的な例と共に見てみましょう。


デナリーのヒット作、クリプトコリネsp.'フラミンゴ'
本種は組織培養カップでしか入荷しません。




















・ストックの容易さ
これは問屋、ショップ共通です。涼しい所に
並べるだけ。まぁ弱光当てておけばOKですかね。
あと、更に低温にしておけば日持ちがします。
専用冷蔵庫も発売されました(笑)

・梱包の簡略化
特に問屋の場合は全国各地への発送があります。
水草の場合は、ポット、鉛巻、バラ株、そして
昨今の観葉植物への流れでそれらも一緒に
発送することが多くなっています。
そして当然上記すべて、梱包の方法が異なるため、
これは人の手でやるしかないので、物凄く手間。
カップならビニール袋に重ねてぽいっと入れるだけ。
小売りの場合も水槽から出して、袋に入れ、輪ゴムで
縛り。。。と言うことをしなくて良いので、問屋と同様に
時間も手間も減らすことができます。

・陳列の簡略化
最近の水草専門店(あるのか?)や水草に注力
しているショップにおいてもカップとなると、既に
水槽すら不要な訳で、水槽を使わないと言うことは、
底床・二酸化炭素の添加、強めの照明、当然ながら
水すら必要でないため、換水も不要。コケの心配も
無し。そうなると経費はもちろん、手間やスペースの
大幅な削減が可能です。必要なものは棚とLED1灯のみ。
もしくは、冷蔵庫内に並べるだけ。

・補足
ファーム目線で考えてもメリットがあると思います。
アヌビアスやクリプトコリネなどは、蘭と同じく
組織培養で生産した苗をある程度のサイズでポットに
植えて、そこから出荷サイズに育成するわけですが、
その育成過程をユーザーに丸投げできる(笑)
昔と違って組織培養の効率は上がっているでしょうから
育成前の段階で販売出来るとなると、出荷サイクルが
早くなり、かなりコストダウンになるのではないかと
想像します。




この組織培養カップは、当初は逆に珍しく、東南アジアの
ファームものが最初だったような。。。ここは記憶が
はっきりしませんが、まぁ入荷したらちょっと物珍しい
感じでしたね。
そうこうするうちにトロピカやアヌビアスと言った
ヨーロッパのファームから少しずつ入荷するように
なりました。徐々に拡大しているところを
見ると、どうしてもこちらに傾いてきているようです。
そして、国内のいくつかの業者からの供給も
始まっています。

トータルで見るとかなりの種類数になってきています。
しかもトロピカの生産に拍車がかかっているのと、
ADAがカップ用の冷蔵庫を特約店に販売したのを
見る限り、かなり注力しているように感じます。


一見、良いこと尽くしのようにも見えますが、
そう感じるのは、アクア業界の体質に慣れ過ぎて
いるからです。
これは前述通り、供給側のメリットが殆どです。
もちろん、コケやスネールを持ち込まないと
言うのは、ユーザーにとってありがたいこと
てしょうし、小さいくはないメリットなのかも
しれません。


ただ、そのメリットと引き換えに失うものがいくつも
ある様に私は感じています。
次回はその点を考えてみたいと思います。


。。。続く


2016年8月11日木曜日

水草業界の分水嶺 (1)

最近の水草の流通はどうなっているのでしょう?

昔から変わらないのは、海外のファームから
問屋が輸入して、それを小売店が仕入れる。
または、主に九州の阿蘇あたりの国内ファームから
問屋が仕入れ、それを小売店に販売する。
その2点だったと思います。

昔から魚などはあったと思いますが、南米有茎や
エキノドルスブームの頃からは、小売店が栽培したものを
問屋に卸す、と言う逆方向への流通も目立つように
なりました。

そして更に近年の傾向として、メーカーなどが器具ではなく
水草を販売することに注力し始めたことが、個人的には
意外と大きな動きだったと感じています。
これは器具だけでは利益率の改善が見込めないことや、
販売数(売上高)の伸び悩み・減少に起因するのだと思います。

そもそも良いものを作れば売れる、当然良いものは
それなりの価格になる、と言うのが普通ではあります。
そしてしばしば趣味の世界ではそれがある程度通用する
ことがあります。理想的ですね。
しかしながら良いものはそもそも壊れにくい上に、
それなりの価格と言う点、併せて使い続けて愛着が湧く、
と言うことを考えると短期間での回転が見込みづらくなります。

景気が良く、誰もが趣味に時間もお金もかけることが
出来るご時世であれば、その良いものが新規ユーザーに
売れ、ヘビーユーザーは古くなったりデザインが変われば
新たに買い直す、と言う需要が見込めますが、現状は
まったく期待できません。
そうなると消耗品で、となるのですが、そもそも水草水槽で
考えた場合、殆ど消耗品が無いんですね。

詳細を見てみましょう。

<年単位で買い替えることはないもの>
・水槽
・照明
・フィルター
・キャビネット
・CO添加器具類
・タイマー
・ハサミ
・ピンセット
など

<数か月単位で買い替えることはないもの>
・底床
・肥料類
など

<1か月程度で買い替えるもの>
・CO2小型ボンベ

しかしながら小型ボンベは水草をやればやるほど
業務用の大型ボンベを使うようになりますし、
現状、小型ボンベを使うライトユーザーの人数が
拡大しているとは考えられません。

さぁ、あとは何が残っているでしょう?(笑)
そうですね、水草と魚・エビ類(いわゆる生体)です。
更に、自社で効率よく低コストで生産出来て、
輸送コストやリスクが低いのはどちらでしょう。

もうおわかりですね。

「水草」

です。

不文律みたいなものはそのうち破られるものでは
ありますが、例えば問屋が小売りをやる。
まぁ大卸価格で仕入れて小売りが出来るのだから
価格面では絶対的に有利ですよね。
小売店からしたら完全に反則です。なので、
「基本的には」やらない。まぁやってますけど。

もちろん、誰が水草を小売店に卸すのかは自由です。
決まりなんてありません。
ただ、メーカーが水草を生産してショップに直接卸すと
いうことは、つまり水草を輸入したり、国産ファームから
仕入れて小売店に卸している問屋の領域を食う訳です。

これも流れとしては仕方がないのかもしれません。
以前にも申し上げたと思いますが、市場に対して
業者がまだ多すぎます。干上がる池の僅かな水の
中に魚がひしめき合ってるのですから。
どうあがいても販売数が伸びないのであれば、
利益率を上げるしかありません。そうなると
発想としては水草の生産に行きつくわけです。
水草に携わっている商売人として当然の成り行きだと
思います。


そして現在、上記の流通の変化に加え、水草の販売方法は
大きな転換点を迎えたのです。

次回はそこを掘り下げていきたいと思います。


。。。続く